もし、愛するパートナーが別の異性とキスしているところを目撃すると、どのように感じるでしょうか?
裏切られたことに怒りを感じ、離婚を考える方もいるのではないでしょうか。
しかし、キスをしているだけでは、法的に不倫を指す「不貞行為」には該当しないのです。
そこで本記事では、「キスが不貞行為の定義に触れない理由」を確認し、その後の対処法なども併せてご紹介します。
目次
不貞行為の定義|不倫との違い
「不倫」と聞くと、どのようなことを思い浮かべるでしょうか?
「性行為からが不倫」、「キスをしたら不倫」、「手を繋いだだけでも不倫」など、その境界線は人の価値観によって変わるかもしれません。
一方で、「不貞行為」は「配偶者をもつ男女が、自由な意思に基づいて、配偶者以外の異性と性的関係を結ぶこと」と明確に定義されています。
どちらも「配偶者以外の異性と関係をもつ」という大意は同じですが、「不倫」に明確な定義はなく、「不貞行為」は法的に定められた定義があるという点がそれぞれの違いです。
離婚や慰謝料請求は法的な問題となるため、「不貞行為」の定義をしっかりと押さえておきましょう。
不貞行為が成立する3つの条件
「不貞行為」は民法の条文にも記載があり、明確に定義された法律用語です。
そんな不貞行為が成立するためには、3つの条件があります。
配偶者がいる
ひとつめの条件は「一方または双方に配偶者がいること」です。
「浮気・不倫」という言葉は、婚姻をしていない男女の間でも一般に使われているのではないでしょうか。
しかし、法的に定めのある「不貞行為」は「一方または双方に配偶者がいること」が条件です。
たとえば、まだ婚姻をしていない男女のうちの一方が別の異性と関係を持っていたとしても、これは「不貞行為」とはいえません。
あくまで、『配偶者をもつ男女』が配偶者以外の異性と関係を結んでいることが条件となります。
配偶者がいなければ、不貞行為を理由に法的責任を問うことはできなくなるため、注意しましょう。
配偶者以外と肉体関係がある
ふたつめの条件は、「配偶者以外と肉体関係があること」です。
特に「肉体関係がある」という条件には注意が必要です。
「どこからが不倫か」の境界線は人によってさまざまな意見がありますが、「不貞行為」には、その境界線が「肉体関係を持ってから」というように明確に定められています。
手を繋いだりハグをしていたりと親密な様子が窺えても、肉体関係が確認できなければ不貞行為には該当しません。
自分の自由意思でおこなっている
不貞行為を「自分の自由意思でおこなっていること」も条件になります。
たとえば、強姦によって無理やり肉体関係を結ばれていた場合、その行為は自由な意思に基づいて行われたものではありません。
不貞行為を理由とする場合には、その行為が「自由意志でおこなわれたものか」という点も確認しておきましょう。
不貞行為が及ぼす影響
ここまで、不貞行為の定義や内容をご紹介しました。
では、実際に不貞行為が及ぼす影響にはどういったものがあるのでしょうか。
それぞれ見ていきましょう。
家族への影響
不貞行為があったときにまず考えられるのが「家族への影響」です。
特に配慮が必要となるのは、子どもがいる場合です。
家庭環境は子どもの人格形成に大きな影響を及ぼします。
離婚をして片親となってしまうことで、子どもの将来に影響を与えてしまうかもしれません。
また、不倫相手も既婚者であった場合は、その不倫相手の配偶者から慰謝料請求されることがあります。
こうなってしまえば、離婚をしない場合でも、慰謝料によって家庭の財産を失うことになってしまいます。
このように、不貞行為が及ぼす家族への影響は多大なものになります。
精神面への影響
次に考えられるのが「精神面への影響」です。
不貞行為が発覚すると、相手を裏切った「罪悪感」や家庭を失うかもしれないという「不安」など、さまざまな精神的負担が生じます。
特に裁判などの法的問題に発展すると、長期間このような精神的負担を強いられることになります。
また、問題が解決すれば負担がなくなるわけではありません。
その後も、慰謝料請求で金銭を失い家庭が困窮したり、配偶者や子どもを失うことで激しい罪悪感と後悔に悩まされ続けることになります。
「不倫による離婚」と聞けば、家庭や金銭を失うといった表面的な損失ばかりが注目されがちですが、こういった精神面への影響も大きなものとなります。
社会的立場への影響
不貞行為が及ぼすものとして「社会的立場への影響」も考えられます。
慰謝料請求などの大きな問題に発展すると、不倫の事実が周囲にバレることがあります。
これによって、職場や近所付き合いでの社会的立場が悪くなってしまうかもしれません。
最悪の場合は居心地の悪さがエスカレートして、離職や引っ越しを余儀なくされてしまうこともあります。
また、自分のみならず、家族の社会的立場にも影響を及ぼすことになります。
配偶者の不貞行為を疑うときに注意すること
配偶者に不貞行為をしている疑いがあった場合、不安や怒りから先走った行動をとってしまうことがあります。
しかし、何も考えずに行動をとってしまい、トラブルになってしまう事例が度々見られます。
そこで、配偶者の不貞行為が疑われるときに注意することを確認しておきましょう。
キスだけでは法的に不貞行為とみなされない
まず押さえなくてはならない点は「キスだけでは法的に不貞行為とみなされない」ということです。
一般的には、配偶者が別の異性とキスをしていれば不倫と考えられがちです。
しかし、不貞行為が成立する条件は「配偶者以外と肉体関係があること」です。
もし配偶者が別の異性とキスをしている場合、道徳には反する行為ではあるものの、不貞行為には該当しません。
当然、不貞行為に該当しないとなると、これを理由に法的な責任を問うことはできなくなります。
「肉体関係が確認できたときにはじめて不貞行為が成立する」ということを押さえておきましょう。
不倫が確実とわかる証拠を複数集める
配偶者に不貞行為の疑いがあるときには、不倫が確実とわかる証拠を複数集めておきましょう。
不貞行為を理由に法的責任を問う場合は、証拠がものをいいます。
なぜなら、「実際に不貞行為をしていた」という事実の立証が必要であるためです。
もしその事実が証明できなければ、「疑わしきは罰せず」という法の原則から、不貞行為はなかったと認定されます。
訴えの理由である不貞行為がなければ、当然相手に責任を問うことはできません。
不貞行為が疑われる場合には、不倫が確実とわかる証拠を複数集めるよう心がけましょう。
感情的にならないよう自制する
配偶者に不貞行為の疑いが生じると、気持ちが高ぶって感情的になってしまうことがあります。
しかし、感情的になってプラスになることはありません。
こちらが感情的に対応をすることで、相手も感情的になってしまうと、まともな話し合いをすることはできなくなります。
本来は話し合いで解決できるのに、折り合いがつかずに裁判に発展してしまうケースもあります。
こういった不本意な事態にならないよう、感情的にならずに自制することを意識しましょう。
夫・妻に気付かれないよう態度を変えずに過ごす
配偶者に不貞行為の疑いがあっても、疑っていることを気づかれないように「態度を変えず過ごす」ということも大切です。
疑いを持っていることが気づかれた場合、証拠隠滅を図られるかもしれません。
また、不貞行為の疑いがあっても、実際は無実で勘違いだったという場合があります。
もし勘違いであった場合、突然態度を変えられたことで相手は不快感を抱いてしまいます。
最悪の場合、信頼を失い離婚に発展するという事態に陥ってしまうかもしれません。
そもそも疑いの段階では、まだ確証はできません。
疑いが生じても、まずは冷静になり、「態度を変えず過ごす」ということを心がけましょう。
不貞行為を防ぐ方法
ここまで不貞行為の内容や注意点をご紹介しました。
しかし、そもそも「配偶者の不貞行為を防ぐ方法はないのか?」と思われた方もいるのではないでしょうか。
不貞行為をしたことには、何かしらの理由があるはずです。
その理由を知っておいた上で対策をすれば、不貞行為を防止できる場合があります。
ここでは、実際に不貞行為を防ぐ方法をそれぞれご紹介します。
共通の趣味をもち時間を共有する
ひとつめに考えられる方法が「共通の趣味をもち時間を共有する」というものです。
共通の趣味があれば、夫婦の時間はより有意義なものになります。
たとえば、お互いに映画鑑賞の趣味があれば、家にいる時間には一緒に映画を観て、休日も映画館に出かけたりと時間を共有する機会は増えます。
特に結婚年数を重ねると、パートナーとの会話は減り、相手への関心も薄れ、同じ時間を共有しなくなる傾向にあります。
共通の趣味があれば会話は尽きませんし、自然とプライベートの時間を共有することができます。
配偶者との時間が有意義なものとなれば、「別の異性と関係を持とう」という考えも薄れるでしょう。
パートナーと新しい趣味を探してみたり、パートナーの趣味に積極的に関心を抱いてみましょう。
そうすることで夫婦関係は円満なものとなり、結果的に不貞行為を防ぐことができるかもしれません。
誠実な態度で信頼関係を築く
誠実な態度で信頼関係を築くことで、不貞行為は防ぐことができます。
結婚年数が長くなり、一緒にいることが当たり前になると、相手に対する態度はぞんざいになりがちです。
「パートナーの不誠実な態度や言動に嫌気が差した」というのも不貞行為の理由のひとつです。
こういったケースによる不貞行為は、普段から相手に対して誠実な態度で接し、信頼関係を築くことで防止できます。
時間を重ねても相手がいることを当たり前とは考えず、常に誠実な態度で接するように心がけましょう。
愛情表現など温かなコミュニケーションをとる
パートナーから愛情を感じられなくなったことから、不貞行為に走ってしまう場合があります。
この場合、愛情表現などの温かなコミュニケーションをとることで、不貞行為を防ぐことができます。
子どもが生まれたり、一緒にいる時間が長くなると、愛情表現をする機会は次第に減っていきます。
「愛情表現しなくても伝わっているだろう」、「今さら恥ずかしい」などと考えることが原因です。
しかし、自分ではそのように考えていても、相手の不安は次第に募ります。
特に結婚当初まで愛情表現をしっかりしていた場合は、現在とのギャップからより愛されていないように感じてしまいます。
パートナーに対して愛情を持っているのであれば、欠かさず愛情表現をすることは大切です。
そのように温かなコミュニケーションをとることが、パートナーの不貞行為を防止する第一歩となります。
不倫の証拠は【肉体関係がわかるもの】が有効
不貞行為の成立する条件が「配偶者以外と肉体関係があること」というのは先に確認したとおりです。
このことから、不倫の証拠は「肉体関係がわかるもの」が有効ということになります。
もし集めた証拠から肉体関係を証明できなければ、不貞行為の立証はできません。
たとえば、配偶者と不倫相手がキスしている写真を入手し、これを証拠として慰謝料請求をしても、この証拠だけでは肉体関係があったかどうかを判断できません。
結果的に、不貞行為の立証はできずに、謝料請求は認められないことになります。
不倫の証拠集めの際には、「肉体関係がわかるものが有効」ということを念頭に置いておきましょう。
証拠品となるもの一覧
では、実際に不貞行為を立証できる有力な証拠にはどういったものがあるのでしょうか。
それぞれ確認していきましょう。
動画や写真
最初に考えられるのは「肉体関係がわかる動画や写真」です。
代表的なものとして「ラブホテルに出入りする写真」が挙げられます。
ラブホテルは一般のホテルと違い、性行為を前提とした施設です。
そのため、「ラブホテルに出入りしている=肉体関係があった」と解釈されることで、不貞行為の証拠になります。
また、「性行為中・性行為前後の写真」も有力です。
たとえば「不倫相手と裸で撮影したツーショットの写真」や「性行為中の動画」が確認できれば、肉体関係があったことを立証できます。
ただし、「写っているのが本人であることを確認できなくてはならない」という点に注意をしましょう。
顔がはっきりと写っていなければ、本人かどうかの判別ができず、証拠としては認められません。
録音データ
「肉体関係が確認できる録音データ」も証拠の一つになります。
たとえば、不倫相手と性行為の内容について言及しているような録音データがあれば、肉体関係にあったことが確認できます。
SNS・LINE・メール
「SNS・LINE・メールの履歴」も証拠となります。
一般的には、こういったトークの履歴だけでは、性行為は確認できないように思われるかもしれません。
しかし、「またラブホテルに行こうね」、「昨日のプレイはよかったね」といった内容の履歴があれば、肉体関係にあったことを推定できます。
領収書・クレジットカードの明細
「ラブホテルの領収書やクレジットカードの明細」も証拠になります。
注意をしなくてはならないのは、これらの証拠だけでは「誰と行ったか」を証明できない点です。
しかし、もし「明日ラブホテル行こうよ」というトーク履歴を別で入手している場合はどうでしょうか?
日付が合致していれば、これらは証拠として有効になります。
このように、「複数の証拠を組み合わせることで有力な証拠になる」ということも押さえておきましょう。
自分で証拠を集めるコツ
具体的にどういったものが不倫の証拠になるかをご紹介しました。
そこで、このような証拠を自分で集めるコツをご紹介します。
証拠を探し出す上で意識するべきなのは「不倫と結びつきがあるものを考える」ということです。
パートナーの周囲のものを片っ端からあさるのではなく、「不倫と関係がありそうなもの」を考えます。
たとえば、SNSのトーク履歴をみれば、不倫相手との密会の記録が見つかるかもしれません。
かばんや財布などの持ち物をチェックしてみると、ラブホテルの領収書が見つかることがあります。
このように、自分が不倫をする側の立場に立って、「不倫と結びつきがあるのはどんなものか」と意識することで、証拠を集められる可能性が高まります。
しかし、過度な尾行や張り込み、盗聴や盗撮をしてしまうと、その調査行為が違法であると判断されてしまうかもしれません。
自分で証拠を集める際には、こういったリスクが伴うことにも注意をしましょう。
集めた証拠が本当に使えるのか探偵に聞いてみる
実際に証拠が集まっても、その証拠が有効なものかを判断するのは難しいかもしれません。
自分では使えるだろうと考えていても、実際の裁判では効力が認められないこともあります。
集めた証拠が使えるものかを確認したい場合は、探偵へ相談をしてみるのもひとつの手段です。
探偵は調査のプロであるため、どういったものが不倫の証拠として有効かを心得ています。
集めた証拠が本当に使えるのか知ることができ、その後の対処法や流れも同時に相談することができます。
不貞行為が確実になったときにおこなうこと
有力な証拠が集まり、配偶者の不貞行為が確実になったときは、どのような行動をとればいいのでしょうか。
その後の流れをそれぞれご紹介します。
今後の夫婦関係をどうするか決める
はじめに、今後の夫婦関係をどうするか決めておきましょう。
まずは「離婚をするかしないか」を決めます。
そのうえで、離婚をしないのであれば、「その後の不倫対策をどのように行うか」といったことも検討しておきましょう。
一方、離婚をするのであれば、慰謝料請求や子どもの親権など、その後必要となることを考えておきましょう。
どの選択をとるかによって、その後の流れや配偶者への対応は変わります。
スムーズに問題を解決するために、あらかじめ先を見据えて考えておくようにしましょう。
相手の言い分をきちんと聞く
パートナーの裏切りに対して、怒りで感情が高ぶるのは当然のことです。
しかし、不倫をしたことには必ず何かしらの理由があるはずです。
たとえば、不倫の原因が「夫婦関係が冷え切っていたこと」であれば、すべての原因が相手にあるとは言い切れません。
不倫をした理由から原因を見つけ出し、夫婦関係を冷静に見つめなおすことで、問題解決ができることがあります。
このように、まずは「相手の言い分をきちんと聞く」ということはとても大切です。
冷静に相手の話を聞いたうえで、その後の対処法を検討していきましょう。
一度だけ許す
もしパートナーの不倫で離婚をすることになれば、生活の変化などで多くの手間と時間がかかります。
特に子どもがいる場合には、夫婦間だけではなく子どもに対しても大きな負担をかけてしまうでしょう。
裏切られたとはいえ、相手は大切な人生のパートナーです。
言い分を聞いた上で、もう一度やり直せるのであれば「一度だけ許す」というのも選択肢のひとつです。
しかし、このときには相手の態度をしっかりと見極めるように意識しましょう。
口先で謝っているだけであれば、一度許しても不倫を繰り返す可能性は高いです。
相手からしっかりと反省の意が窺え、今後は改善が見出されると感じた場合は、もう一度だけ相手を信じて許すことを視野に入れてみましょう。
離婚を提案する
離婚には多くの手間や時間がかかります。
さらに、これまで時間を共有してきた大切なパートナーを失うことで、大きな精神的負担が生じます。
しかし、それらを考慮してもなお、相手の裏切りを許すことができなければ、離婚を提案することになります。
離婚は人生の岐路となる重要な選択です。
その場の一時的な感情で決めるのではなく、冷静に話し合いをして、相手の言い分や態度も確認しながら慎重に判断をしましょう。
慰謝料請求したいなら専門機関に話を聞いておく
不倫をされた場合、慰謝料請求が思い浮かぶかもしれません。
実際に不貞行為を理由に慰謝料請求は可能ですが、示談交渉や裁判の場では法的な専門知識が必要になります。
十分な法的知識がないままに対応をしてしまい、証拠は揃っているのに慰謝料請求が認められないケースも実際にあります。
こういった事態を避けて、確実に慰謝料請求をするのであれば、法律のプロである弁護士などの専門機関に話を聞いておきましょう。
揃えた証拠の有効性やその後の対処法について、専門家に詳しく相談することができます。
まとめ|不貞行為は法的な定義にそった証拠が必要
今回は、キスが不貞行為の定義に触れない理由を確認し、不貞行為の内容や対処法についてご紹介しました。
配偶者の不貞行為の立証には、法的な定義にそった確実な証拠が必要です。
不貞行為の定義をしっかりと確認した上で、有効となる証拠を集めるように心がけましょう。