マッチングアプリやSNSの普及により、一見普通の出会いに見える場面で「美人局(つつもたせ)」の被害に遭うケースが見受けられます。ちょっと気になる相手が、実は巧妙な罠を仕掛けていたという事例です。
この記事では、このような美人局の具体的な手口を交えて解説し、その実態を浮き彫りにします。さらに、被害を未然に防ぐための注意点や、対策についても詳しくご紹介します。
目次
美人局とは?
美人局(つつもたせ)とは、主に男性をターゲットにした犯罪手法の一つで、女性を利用して金銭を脅し取る行為を指します。
具体的には、女性と肉体関係を持つ、もしくは持とうとする場面で、女性と共謀している第三者が現れて、金銭や財産を要求するのが典型的な流れです。
この行為は恐喝罪や詐欺罪などに該当します。刑事上の責任が問われる重大な犯罪行為です。
現代における美人局の実態
現代の美人局は、インターネットやスマートフォンの普及により、オンラインでの出会いを悪用するケースが増えています。これらの手口は、一見すると普通に出会いを求めているように見せかけていることから、被害者が警戒心を抱きにくいのが特徴です。
被害が多いとされる代表的なオンラインサービスには、以下のようなものがあります。
- SNS
- マッチングアプリ
- 出会い系サイト
- パパ活
これらの手口に共通しているのは、ターゲットが「普通の出会い」と感じやすい状況を装い、相手に警戒心を持たせない点です。
美人局が行われる手口の具体例
現代における、美人局が行われる手口の具体例をご紹介します。被害の実態を明らかにし、リスクを避けるための参考にして下さい。
SNS・マッチングアプリを使った手口
SNSやマッチングアプリを利用した巧妙な手口が横行しています。
事例1: 強盗・暴行を伴う手口
大阪市では、マッチングアプリで知り合った16歳の少女が男性を誘い出し、待ち合わせ場所に共犯者の男性らが現れ、暴行を加えた上で金品を奪おうとする事件が発生しました。
被害者はビール瓶で頭を殴られるなどのケガを負いましたが、近くの交番に逃げ込み、事件が発覚しました。
参照元:朝日新聞デジタル「大阪の「美人局」事件、少女と少年を監禁致死の非行内容で家裁送致」
事例2: 偽の関係者による脅迫
横浜市では、SNSを使って架空の女性を装って男性を誘い出し、待ち合わせ場所で共犯者が「警察に言う」などと脅迫し、金銭を
要求する事件が発生しました。被害者が抵抗すると暴行を加えられ、財布を奪われるなどの被害が確認されました。
参照元:神奈川県新聞「SNSで「援助を」…脅し財布奪う 美人局の男女摘発」
これらの手口に共通するのは、最初に女性が接触し、信頼感を構築してから第三者が登場する点です。
SNSやマッチングアプリの匿名性や手軽さが悪用されています。金銭的な被害だけでなく、暴行や恐喝のリスクも高まっているのです。
メンズエステで行われる手口
東京都内で、メンズエステ店を装い、美人局の手口で男性客から現金を脅し取ったとして、暴力団関係者ら9人が逮捕されました。
容疑者らは、店舗に来店した客に「女性従業員が嫌がる行為をした場合、罰金200万円を支払う」と記載された誓約書にサインさせ、性的サービスを誘発するよう仕向けました。
客がサービスに応じた後、共犯者が部屋に押し入り「違約金を支払え」と脅迫。監禁や暴行を加えるなどして金銭を強要しました。170人以上の被害者が確認され、被害総額は約3500万円にのぼるとされています。
参照元:時事ドットコムニュース「エステ店で「美人局」、9人逮捕 性的サービス後、「罰金」恐喝―警視庁」
このような手口では、メンズエステ店を装うことで男性客の警戒心を下げ、合法的な店舗に見せかけることが特徴です。
パパ活による巧妙な手口
香川県で女子中学生(14)が「パパ活」を利用した恐喝事件が発覚しました。20歳の知人女性が「パパ活より楽に稼ぐ方法がある」と持ちかけ、女子生徒がパパ活相手を誘い出し恐喝を実行。
51歳の男性をホテルに誘導し、待ち伏せしていた26歳の男が「中学生との関係を拡散する」と脅迫しました。さらに、女性がその様子を撮影し、男性からATMで50万円を脅し取りました。金銭は成人3人で分配され、一部を女子生徒も受け取りました。
未成年を巻き込む、こうした計画的な犯行は非常に悪質です。社会全体でこうした事件を防ぐための取り組みが必要になるでしょう。
美人局による犯罪とは?
美人局(つつもたせ)は、被害者に対して金銭や財物を脅し取る行為であり、刑法上の重大な犯罪に該当します。
- 恐喝罪
- 暴行罪
- 傷害罪
- 詐欺罪
- 強盗罪
状況に応じて複数の罪が成立する可能性があります。また、美人局の被害者が加害者として法的責任を問われるケースもあるため、注意が必要です。
恐喝罪・詐欺罪・暴行罪などに該当する
犯罪名 | 解説 |
---|---|
恐喝罪 | 美人局の手口は、「俺の女に手を出した」「妊娠したため費用を払え」といった脅し文句で金銭を要求するものです。これにより恐喝罪が成立します。
刑法第249条に基づき、恐喝罪の法定刑は10年以下の懲役です。 たとえば、被害者が女性と会った直後に現れた共犯者が「100万円を用意しろ」と脅迫して金銭を奪い取った場合、恐喝罪に該当します。金銭の要求が成功しなかった場合でも、「脅迫罪」「恐喝未遂罪」として処罰対象となります。 |
暴行罪・傷害罪 | 美人局は、被害者に暴行を加えるケースも少なくありません。暴行が軽微で傷害に至らなかった場合は暴行罪、身体的な傷害が発生した場合は傷害罪が成立します。
たとえば、被害者が共犯者に投げ飛ばされ、打撲傷を負いました。このような場合、刑法第204条の傷害罪に該当します。15年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。 |
強盗罪
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美人局の加害者が暴行や脅迫を伴って金品を強奪した場合、強盗罪が成立します。
たとえば、被害者を殴った上でATMから現金を引き出させた場合、強盗罪に該当します。 刑法第236条では、強盗罪の法定刑は5年以上の有期懲役と定められており、極めて重い罪です。 |
詐欺罪
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美人局が詐欺罪に該当する場合もあります。
たとえば、女性が「未成年者に手を出した」と嘘をつき、被害者が金銭を支払った場合、詐欺罪が成立します。 刑法第246条に基づき、詐欺罪の法定刑は10年以下の懲役です。 |
引用元:刑法
実例:美人局関連の事件
マッチングアプリを使った事件
静岡市でマッチングアプリを悪用した美人局事件が発覚しました。逮捕された男女5人(17〜20歳)は、被害者とマッチングアプリを通じて接触し、待ち合わせ場所で脅迫・暴行を加えて金銭を奪うという手口を繰り返していたのです。
主犯格の女性が男性と会った後、共犯者が現れて「なぜ会っているんだ」などと因縁をつけ、ATMで現金を引き出させるという流れでした。
犯行は少なくとも3件行われており、被害者は肩の打撲などのケガを負い、加害者5人は強盗致傷罪や恐喝未遂で逮捕されました。
参照元:FNNプライムオンライン「マッチングアプリに潜む危険!現代版“美人局”に注意 「女の知り合いが怒っているぞ」男女5人を恐喝などで逮捕【静岡発】」
被害者側が犯罪者になるケースとは?
美人局に巻き込まれた被害者が、実は法律上の加害者となるケースもあります。これは、被害者が未成年者と関係を持つなど、違法行為を行っているケースで発生します。
美人局の相手が未成年の場合、被害者が不同意性交等罪(旧強制性交等罪)や児童福祉法違反に問われる可能性があります。
実際に、静岡県内では、教員による不祥事が相次いで発覚。県立高校の教諭が児童買春・児童ポルノ禁止法違反の容疑で逮捕されました。この教諭はSNSで知り合った女子高校生と不適切な行為を行い、その際に動画を撮影していたとされています。
この逮捕は、教諭が別の女子高校生と接触した際、美人局(つつもたせ)の手口で恐喝被害に遭い、その捜査中にスマートフォンから問題の動画が発見されたことで明らかになりました。
参照元:読売新聞オンライン
美人局は加害者が厳しく処罰される犯罪ですが、被害者自身が法的なリスクを負うケースもあることを理解しておきましょう。
相手が未成年である場合や、違法行為に関与した場合、被害者も加害者として扱われる可能性があるのです。
美人局の被害にあったらどうする?
美人局の被害に遭った際、冷静な対応が重要です。その場で取るべき行動や、警察・弁護士・探偵への相談に関して解説をします。
その場で取るべき行動(逃げる・冷静になる)
美人局の被害に遭った場合、最初にすべきことは冷静になることです。相手が暴力や脅迫をしてきた場合、可能であればその場から速やかに逃げましょう。ただし、無理に逃げて身に危険が及ぶ場合は、適切なタイミングを見計らうことが重要です。
逃げた後も、脅迫メッセージや電話が続くことがありますが、基本的には応じる必要はありません。むしろ、これらのメッセージは証拠として保存しておきましょう。身の安全を第一に考え、慎重に行動することが求められます。
美人局で警察は動いてくれるのか?
警察は、美人局被害に対して対応します。ただし、証拠が不足している場合や、自身にも法的リスクがあるケースでは、慎重に対応する必要があります。
警察に相談する際は、次のポイントを押さえましょう。
緊急性が高い場合
すぐに110番通報し現場に警察を呼びましょう
刑事課への相談
被害届を提出する際は「刑事課」を訪ね事件性を明確に伝えることが重要
証拠の準備
脅迫の日時や内容を記録したメモや録音を提出することで捜査が進みやすくなります
被害を届け出ることで、加害者が他の被害者に手を出すのを防ぐことにもつながります。
弁護士に相談するメリット
弁護士に相談することで、法的に適切な対応を取ることができます。弁護士に相談するメリットは以下の通りです。
自身の法的リスクの確認
自分が売春防止法に違反していないかなど専門的な判断を仰ぐことが出来る
加害者への法的対応
弁護士を通じて脅迫への対応を行うことで直接交渉を避けられる
警察への同行
警察への相談に不安がある場合に弁護士が同行してサポート
「誰にも知られずに解決したい」という場合でも、弁護士は守秘義務を持っているため、安心して相談できます。
探偵に相談するメリット
探偵事務所に相談するのも選択肢の一つです。相手の素性を調査したり、証拠を収集したりする際に役立ちます。探偵に依頼するメリットは、以下の通りです。
相手の身元調査
相手が使っている偽名や虚偽の情報を明らかにすることができる
証拠の収集
脅迫や恐喝の具体的な証拠を収集し警察への被害届提出をサポート
相談の秘密保持
相談内容を第三者に漏らすことはなく家族や職場に知られる心配はない
探偵の調査結果を元に、警察や弁護士と連携することで、より迅速な解決が期待できます。
美人局被害を防ぐための具体策
美人局の被害を防ぐためには、リスクを正しく理解し、具体的な対策を取ることが重要です。被害に遭わないための具体策をご紹介します。
美人局の特徴とは?
美人局は、以下のような特徴を持っています。
1. 出会い方が急速に進展する
短期間で高級ホテルを提案してくるなど関係を深めたがる相手は要注意
2. 相手の要求が明確すぎる
金銭に関する指示が多い場合に計画的な犯罪の可能性が考えられます
3. 過剰な誘導
不自然に好意を示すなど過剰なアプローチを受けたら冷静に判断
これら美人局の特徴を、あらかじめ理解しておきましょう。
安全な出会い方のポイント
美人局の被害を防ぐためには、以下の点を意識した出会い方を心がけましょう。
公共の場を選ぶ
初めて会う際は、必ず駅前やカフェなど人目が多い場所を選びましょう。人気の少ない場所を指定された場合は、断ることも大切です。
夜遅い時間を避ける
深夜の待ち合わせやデートは避けましょう。暗い時間帯はトラブルが起きやすいため、昼間に会うよう提案してください。
相手の背景を確認する
SNSやアプリのプロフィール情報が曖昧な場合は要注意です。事前に信頼できる情報があるかを確認しましょう。
美人局の被害を防ぐためには、不自然な提案を断る勇気も必要です。
怪しい相手を見抜く方法
相手が美人局の可能性がある場合、以下の行動が見られることがあります。
場所や時間を細かく指定する
特定の条件を押し付けてくる場合は危険な可能性があります
極端な自己開示
短時間で個人的な悩みや過去のトラウマを共有してくる場合は警戒が必要
金銭やプレゼントを要求する
交際初期の段階で金銭的な援助を求めてきたら詐欺の可能が考えられる
これらの行動は、相手が計画的に美人局を仕掛けている可能性を示します。自然な交際の範囲を超える行動であり、警戒が必要でしょう。
個人情報・身分証の管理方法
美人局の被害を防ぐためには、個人情報の管理が非常に重要です。
身分証を持ち歩かない
免許証やマイナンバーカードなど、個人情報が記載されたものを相手に見せるのは避けましょう。これらは脅迫の材料に使われる可能性があります。
クレジットカードを持たない
初対面の相手との会合には、クレジットカードを持参しないことを推奨します。カード情報が盗まれるリスクを防ぐためです。
SNSの公開情報を限定する
住所や勤務先が特定されるような情報は、SNS上で公開しないようにしましょう。
美人局被害を防ぐには、これらの対策が重要になります。
まとめ
美人局は、インターネットやオンラインサービスの普及により、被害の手口が巧妙化しています。一見普通の出会いに見える状況でも、計画的な罠が仕掛けられている可能性があるのです。
この記事で解説したように、美人局の特徴を理解して、安全な出会い方を心がけることで被害を未然に防ぐことができるでしょう。
万が一被害に遭った場合は、冷静に対応し、警察や弁護士、探偵などの専門機関に相談してください。正しい知識と対応策を持つことで、自分を守り、安心して生活を送ることができます。