「ストーカーが怖い」「もしかして、狙われている…?」被害者が一人で悩むことも多いストーカー被害。
警察庁の統計によると、令和5年度の相談件数は19,843件に上り、前年より712件増加、いまだ多数の被害者がいるのが現状です。
今回は、相談者の事例をもとに、してはいけないNG行動や対処法などを解説いたします。
目次
ストーカー行為はどんなものか
ストーカー行為の具体的な内容は「ストーカー行為等の規制等に関する法律(ストーカー規制法) 」によって細かく定義されています。
- つきまとい、待ち伏せ、押しかけ
- 頻繁な電話、メール、SNSでのメッセージ
- 脅迫、名誉毀損、誹謗中傷
- 無理やりプレゼントを渡す など
特定の人物に対して、頻繁な電話やメール、SNSでの付きまといや嫌がらせ、自宅や職場への押しかけなどを繰り返し行う行為を指します。
これらは恋愛感情や恨みを背景に行われることが多く、ストーカー行為とみなされ、規制の対象になります。
被害者の精神的な負担も大きく、ストーカー行為がエスカレートしていくと身の危険もあります。特に恐怖や不安から誤った行動をすることで、相手を刺激し状況が悪化する可能性もあります。
具体的にはどんなことか、事例をもとに解説します。
※なお、以下の内容は守秘義務に反しない限度で改変を加えています
実際のストーカー被害体験談
Aさんは、元交際相手からの待ち伏せや深夜の押しかけ、執拗な訪問など、プライバシーを侵害する行為が続きました。
ある晩、マンションの前で待ち伏せされ声をかけられましたが、恐怖心から大声をあげて拒否。相手も興奮してしまい、震える手で110番通報したそうです。
近隣住民から「スーツ姿の男性がドアを叩いていた」「何時に帰ってくるか聞かれた」等の証言を得て、ストーカー行為のエスカレートを実感しました。手紙が届いたりしましたが、気持ちが悪いと破棄してしまいます。
さらに、ストーカーはAさんの親御さんにまで連絡をし始めました。警察に相談しましたが
「証拠不足で警告できない」
「毎日続いている証拠がないと動けない」
と言われたそうです。一人暮らしのマンションには防犯カメラもついておらず、確固たる証拠はありません。ご自身とご近所さんの目撃情報のみでした。
Aさんは孤立無援の状況に陥ってしまい、どうしたらいいかわからなくなりました。
ストーカー行為がもたらす恐怖や不安、孤独感の深刻さがわかります。また、証拠収集の難しさや周囲の理解不足など、ストーカー被害特有の問題もあります。
ポイント解説
「毎日怖くて警察に相談しても、結局は動いてくれませんでした」というAさん。Aさんのケースでは、ストーカーからの手紙やメールを破棄してしまったことが、証拠収集の妨げとなりました。また、大声で拒絶したことで、相手を刺激してしまった可能性も考えられます。
警察は、証拠をもとに動くため、ストーカー規制法に準じた被害が確実にあることを示すものが必要となります。
メールや手紙などを破棄しており、防犯カメラの映像もないとなると、人の目撃証言だけでは証拠としては弱いかもしれません。「見た・聞いた」などは嘘も言えるからです。
ストーカー被害において『してはいけないNG行動』というものがあります。これからはしないほうがいいこと、これから対処したほうがいいことを見極める必要がありました。
ストーカー被害者がしてはいけないNG行動6つ
ストーカー被害に遭った場合、どうすればよいのでしょうか?
被害者は混乱や恐怖から適切な行動がとれなくなることがあります。状況を悪化させないためにも、以下のようなNG行動は避けるべきです。
ストーカーを刺激する言動
大声で反抗したり、感情的に反応したりすることは、ストーカー行為をエスカレートさせる可能性があります。
ストーカーと直接対峙して口論になると、相手も感情的になり危険です。冷静な対応を心がけ、ストーカーとの接触は可能な限り避けましょう。
個人情報の不用意な取り扱い
手紙など自分の個人情報が記載されているものをそのまま破棄したり、インターネットに公開するメールアドレスや誕生日などの情報にも気を付けなければなりません。
SNSでの投稿やブログなどで、自分の居場所や予定を安易に公開してしまうと、ストーカーに情報を与えてしまうことになります。外出先を投稿すれば帰宅時間を知られてしまう恐れもあり、待ち伏せされる危険が高まります。
個人情報の管理を徹底し、ストーカーに情報を与えないようにしましょう。
問題を一人で抱え込む
ストーカー被害に遭っても、恥ずかしさや誤解への不安から、一人で問題を抱え込んでしまう人がいます。しかし、それでは問題の解決は難しくなります。
自意識過剰な反応をしていると思われるのではないか?偶然、会っただけで考えすぎかもしれない。そんな思いから対策を後回しにしてしまいがちです。
信頼できる友人や、専門機関に相談し、サポートを受けることが必要です。
被害の証拠を破棄してしまう
ストーカーからの手紙やメールなど、頻度が増すごとに恐怖心も増していきます。Aさんのように被害者は「気持ち悪いから」とメールを削除したり、手紙やプレゼントを破棄してしまいますが、カタチのあるものは今後の大切な証拠となります。
電話の録音や手紙、メールなどは、警察への相談や法的措置を取る際に重要な役割を果たします。恐怖心から証拠を破棄してしまうと、警察などの第三者への説得も難しくなります
証拠は保管し、必要に応じて提出できるようにしておきましょう。
ストーカーの存在を完全に無視する
関わりたくないとストーカーからの連絡を完全に無視することは、ストーカーの行為をエスカレートさせる可能性があります。
ストーカーに対しては、毅然とした態度で、明確に拒絶の意思を伝えることが大切です。ただし、直接の接触は避け、文書や第三者を通じて伝えるようにしましょう。
家族や友人を巻き込んで対抗する
ストーカー被害に遭った場合、家族や友人に問題を相談することは大切ですが、安易に巻き込んで対抗することは避けるべきです。
Aさんの事例のように、ストーカーが家族にまで連絡してくる可能性があります。家族や友人の安全を守るためにも、問題の解決は警察など専門機関に任せることが賢明です。
証拠収集は、ストーカー行為を立証するために不可欠であり、警察への相談や法的措置に役に立ちます。ストーカー行為への対応は、安全確保を最優先に、冷静かつ慎重に行わなければなりません。
Aさん「気持ち悪くて、すぐにメールも手紙も捨てたのは間違いでした。警察に相談してよくわかりました」
相談員「これからは、できるだけ捨てずに残しておいた方がいいですね」
Aさん「はい。待ち伏せをするときは決まった場所に車をとめて監視されていましたが、スマホで写真をとったほうがいいのでしょうか?」
相談員「証拠を残すとはいっても、おひとりでできることに限界はあります。ただし、Aさんの安全が最優先です。まずはできることを対策していきましょう」
ストーカー被害に対する具体的な対応策
ストーカー被害に遭った場合、被害者は適切な対応策を取ることが解決への近道です。以下に、具体的な対応策を説明します。
身の安全を最優先に確保する
ストーカー被害に遭った場合、何よりも自分の身の安全を最優先に確保しなければなりません。ストーカーから物理的に距離を取り、直接の接触を避けるようにします。
必要に応じて、一時的に自宅を離れたり、警察に保護を求めたりすることも検討しましょう。
ストーカーへの正しい対応方法
ストーカーに対しては、毅然とした態度で、明確に拒絶の意思を伝えることが重要です。ただし、直接の接触は避け、文書や第三者を通じて伝えるようにしましょう。
ストーカーを刺激するような言動は控え、冷静な対応を心がけてください。
被害の記録と証拠収集
ストーカー行為の証拠は、警察への相談や法的措置を取る際に重要な役割を果たします。
ストーカーからの手紙やメール、電話の録音など、被害の記録は適切に保管し、時系列に整理しておきましょう。写真や動画など、視覚的な証拠も有効です。
警察や信頼できる人への相談
ストーカー被害に遭ったら、一人で問題を抱え込まずに、警察や信頼できる人に相談してください。警察には、ストーカー行為の内容や証拠を詳しく説明し対応を求めましょう。
家族や友人、職場の上司など、信頼できる人にも状況を説明し、サポートを受けてください。
安全確保のための日常生活での工夫
ストーカー被害を防ぐためには、日常生活での工夫も必要です。SNSでの個人情報の公開を控え、プライバシー設定を強化しましょう。
また、日頃から防犯意識を高め、不審者への警戒を怠らないようにしてください。通勤・通学ルートを変えたり、防犯ブザーを携帯したりするのも効果的です。
ストーカー被害を防ぐには、日頃からの予防策も必要です。すぐにできることの一つは、SNSでの個人情報の管理です。
また、防犯意識を高めストーカー被害のサインを見逃さないこと。ストーカー被害の兆候を感じたら、早期に専門機関に相談することが、身を守ることにもつながります。
ストーカー被害防止のための予防策
ストーカー被害を未然に防ぐためには、日頃からの予防策が欠かせません。以下に、ストーカー被害防止のための具体的な予防策を説明します。
SNSなど個人情報の管理
SNSでの個人情報の公開は、ストーカー被害のリスクを高めます。自分の居場所や予定、私生活に関する情報は、できるだけ公開しないようにしましょう。SNSのプライバシー設定を見直し、知らない人からのアクセスを制限することも重要です。
また、オンライン上での知り合いには十分注意し、安易に個人情報を教えないようにしてください。
防犯意識を高めるための習慣
日頃から防犯意識を高め、ストーカー被害のリスクを減らすことが大切です。外出時は、人通りの多い明るい道を選び、できるだけ一人にならないようにしましょう。
また、自宅の鍵は二重ロックにするなど、住居の防犯対策も怠らないでください。防犯ブザーやスマートフォンの緊急通報機能を活用するのも効果的です。
ストーカー被害のサインを逃さない
ストーカー被害は、突然始まるのではなく、徐々にエスカレートしていくことが多いです。不審な電話やメール、つきまとい、プレゼントの送りつけなど、ストーカー被害の兆候を感じたら、早期に対応することが重要です。
ストーカー行為を放置すると、被害が深刻化する恐れがあります。異変を感じたら、すぐに警察や専門機関に相談し、適切な助言を求めましょう。
ポイント解説
Aさんには、日常でできる予防策を実行していただきました。個人情報の公開は限定し、出かける予定や外出先がわかる様な投稿を控える。また、画像の位置情報はOFFにしておくなど、居場所や行動が判明する公開はしないこと。
さらに、防犯カメラのないマンションということなので、自宅に入るまでは周囲にも気を配る、もしもの時のために防犯ブザーを持ち歩き、暗い道は避けて帰宅するよう話しました。
調査員も張り込みをして、該当人物が待ち伏せ・監視する映像もおさえました。
Aさんはそれをもとに再度警察へ相談しました。ですが、付きまといや待ち伏せが毎日連続していないことから、ストーカー規制法による警察からの警告には至りませんでした。
Aさん「やはり連続した毎日でないと警告できないといわれました」
調査員「そうでしたか。でも証拠を提示したら警察もむげにはできませんよね」
Aさん「はい。なので生活安全課の刑事さんから本人に連絡を取ってくれました」
調査員「どんな対応をしてくれたんですか?」
Aさん「警察から本人に注意していただたことは3つ。
- 待ち伏せ行為は二度としないこと
- Aさんに自ら近づくことは決してしないこと
- 納得しないなら、弁護士を通して民事なり裁判で第三者を交えて堂々とやり取りすること
警察からの電話に危機感を持ったのか、その後はぱったりと待ち伏せや監視はなくなりました。
ただし、しばらくするとまた手紙が届いてしまいます。住居や電話番号が知られているため、結局Aさんはすぐに引っ越しました。電話番号もかえ、新住所は会社にのみ伝え、状況が落ち着いてから親御さんに新しい住所も伝えたそうです。
現在は、新天地で不安のない生活を送られています。
まとめ
ストーカー被害は、被害者の生活や心身に深刻な影響を及ぼす犯罪行為です。ストーカー行為の具体例や、実際の被害体験談から、その恐ろしさを理解することができます。
ストーカー被害は、誰にでも起こり得る問題です。一人で不安を抱え対処が後回しになると、手遅れになることもあります。Aさんのようにすぐに110番通報し、その後も適切な対処をとることで身の安全を確保してください。
恐怖や不安もよくわかります。ですが、一番大切なことは、あなたの身の安全です。