浮気や不倫という単語はよく耳にしますが、その本質や法律上の扱いは意外と知られていません。
本記事では浮気と不倫の違いや、日本における法律上の扱いの変遷、世界の不倫事情などの雑学を掘り下げました。時代によって、また国の文化や歴史によって、浮気と不倫の立ち位置が変わっていったようです。
目次
社会と法律の視点から見る浮気と不倫の定義
似たような意味を持つ「浮気」と「不倫」の2語。日常的に使い分けられているようですが、何か明確な定義はあるのでしょうか。本項では言葉のイメージ、単語の意味、法律上の位置づけから考えてみました。
浮気と不倫の感覚的な違いとは
浮気と不倫には明確な定義がないため、人によって使い分けが異なります。しかし一般的なイメージでは、どうやら次の違いがあるようです。
- 浮気:恋人がいる未婚者同士の場合
- 不倫:双方、あるいは片方が既婚者の場合
「既婚者」に内縁や婚約が含まれるかどうか、解釈は人それぞれでしょう。浮気と不倫に明確な線引きはできないものの、感覚的には未婚か既婚かを基準にするケースが多いようです。
浮気と不倫の単語上の違いとは
実際に「浮気」「不倫」という単語には、どのような違いがあるのでしょうか。国語辞典を紐解くと、単語上の意味の違いが分かります。
浮気:気まぐれに異性から異性へと心を移すこと。決まった妻や夫、婚約者などがいながら、他の異性と恋愛関係を持つこと。また、そのさま引用
不倫:道徳にはずれること。特に、配偶者以外と肉体関係をもつこと。また、そのさま
浮気は「決まった妻や夫、婚約者などがいながら」とあるように、幅広く使える単語です。そのため、人によって使い分けが異なるのも当然かもしれません。
不倫の本来の意味は「人の道徳に外れること」であり、不倫=不道徳です。もっとも現代では「道徳に外れた男女関係」の意味で使われることがほとんどでしょう。
法律上の浮気・不倫とは
「浮気」「不倫」は法律用語ではなく、民法や刑法にも定めはありません。しかし民法に出てくるもっとも近い単語としては「不貞行為」が挙げられます。民法第770条では不貞行為を「裁判所に離婚の訴えを提起できる要件」として定めています。
不貞行為とは、配偶者以外の異性と自らの意思で肉体関係を持つことです。個人的な考え方はどうあれ、不貞行為は明確な肉体関係があって初めて該当する、とても限定的な単語になります。
「配偶者が不倫したから慰謝料や離婚を請求したい」という場合は、不貞行為があったことを証明しなければなりません。デートやキスをしている写真では不貞行為にならず、証拠として不十分です。
不貞行為の証拠を掴むのは難しく、プロの技術や調査のノウハウが求められます。そのため、探偵社などの専門家に相談する人もたくさんいます。
浮気・不倫に対する法的な歴史
前述したとおり、日本に姦通罪があったのは過去の話です。現在の不貞行為も民法に記載があるだけで、刑法では定められていません。しかし、過去には不倫が大罪だった時代もありました。
本項では日本における浮気や不倫と刑罰の変遷、現代の位置づけ、不倫のリスクについて見ていきます。
日本における浮気・不倫の罰則の変遷
平安時代という響きには、少なからず恋愛や浮気に自由なイメージがあります。有名な源氏物語では、主人公が数多の女性と恋愛模様を繰り広げる様子が描かれます。しかし実際には、不倫は「姦通罪」として律令で禁じられ、刑罰は2年から2年半の懲役でした。もっとも当時は戸籍がなかったことや、一夫多妻制だったこともあり、姦通の証明自体が難しかったようです。
江戸時代になると、不倫は「不義密通」という大罪とされ、その刑罰は極刑でした。しかも、罪に問われるのは妻と不倫相手の男性に限られ、夫が未婚女性と浮気をするのは問題にならなかったといいます。おまけに不倫された夫は、妻と相手の男性を「斬り捨て御免」と殺害することも許されていました。
明治時代から昭和22年(1947年)まで、不倫は再び姦通罪となり、刑罰は2年以下の懲役でした。江戸時代の不義密通ほど過激ではないものの、やはり罪に問われるのは妻および不倫相手の男性で、夫には処罰がありません。それどころか、富裕層にいる男性の間では、妾(めかけ)を囲うことが一種のステータスとされていました。
現代における一夫一婦制の保護
前述したように、現代の日本に姦通罪のような法律はありません。しかし、重婚となると話は別です。重婚は民法、刑法ともに禁じられています。
民法第732条:配偶者のある者は、重ねて婚姻をすることができない。
刑法第184条:配偶者のある者が重ねて婚姻をしたときは、二年以下の懲役に処する。その相手方となって婚姻をした者も、同様とする。
刑法において不貞行為は犯罪にあたらず、一方で重婚は罪に問われます。民法上も、後から出した婚姻届けは受理されないため、一夫一婦制は法的にしっかりと守られています。
長い間一夫多妻制だった日本で、一夫一婦制が導入されたのは1898年(明治31年)のことでした。意外なことに、まだ150年にもなりません。
現代の不倫がはらむリスク
法に触れないとはいえ、現代の日本において、浮気や不倫にはさまざまなリスクが伴います。
不貞行為が明らかになった場合の大きなリスクは、慰謝料を請求されたり、離婚を要求されたりすることでしょう。慰謝料請求は配偶者だけでなく、その不倫相手も対象です。また浮気や不倫が明るみに出れば、周囲の評価が落ちること、仕事に悪影響を及ぼすことも考えられます。
浮気や不倫は「誰にも話さなければ大丈夫」「見つからないようにしているから問題ない」というものではありません。SNSへの何気ない書きこみ、ちょっとした態度の変化などから、周囲に気づかれる可能性もあります。本人が普段の態度やスマートフォンの扱いに細心の注意を払っても、完全に隠すことは難しいでしょう。調査の専門家が乗り出せば、確たる証拠をつかむことが可能です。
世界の浮気・不倫に対する社会的事情
ここまでは、日本における浮気と不倫の定義や社会的な扱いなどを見てきました。日本での姦通罪や不義密通は昔の話ですが、世界に目を向けると、国によって扱いが異なっているようです。
本項では世界の浮気・不倫事情の一部をご紹介します。
不倫に対する寛容さの違い
キリスト教のプロテスタントでは、不倫は罪とされています。そのため、信者が多いアメリカやイギリスは、不倫にそれほど寛容ではありません。またアメリカは訴訟大国であるため、不倫が発覚するとすぐに慰謝料請求の訴訟を起こされてしまいます。どうやらアメリカでは、不倫=リスキーと捉えられているようです。
一方、フランスやイタリアでは事情が異なります。フランスは大統領の不倫スキャンダルに対して「大統領の個人的なこと」という意見が多かったほど、不倫に寛容な風潮です。恋愛に積極的な人が多いイタリアも、不倫が多いといわれています。
また、イスラム教は不倫を「ジナの罪」として禁じています。そのためトルコ、エジプト、インドネシアなどイスラム教諸国では、不倫に対してとても厳しい考えを持つ人が多いのです。
浮気・不倫に対する世界の法律傾向
世界には、浮気や不倫を違法と定めている国も存在します。しかし全体的には少数派で、韓国では2015年、台湾では2020年に姦通罪が廃止されました。
イスラム教諸国では、不倫を犯罪として扱っている国もあります。その刑罰は重く、極刑が課されることもあるようです。またイスラム教は一夫多妻制で、男性は4人まで妻を持つことができますが、すべての妻を平等に扱わなければなりません。
フィリピンではいまだに姦通罪が定められています。男女とも刑罰の対象となりますが、男性は最高で4年の禁固刑なのに対し、女性は6年とより罪が重いです。これは子どもができた場合、出産した母が戸籍登録をしなかったり、ネグレストになったりするケースが多いからだといわれています。
まとめ
今回の記事では、日本における浮気と不倫の違いや法律の歴史、海外での傾向などをご紹介しました。
浮気と不倫は国や文化によっても、時代によってもその位置づけや扱いが変わります。現代では刑事罰に問われない不倫が、歴史をさかのぼれば大罪だった時代もあるのです。
現代の日本では、浮気や不倫は刑事罰にこそ該当しませんが、離婚訴訟や慰謝料請求などの理由となります。パートナーの浮気や不倫を疑いながら、ご自分で調べる術がないとお悩みの方は、探偵などのプロに相談するのも一案です。